
明日のわたし
「私のせいでいじめられていた二人へ、本当にごめんなさい」思いは時を超え、受け取ったのはいったい誰? 七つの短編をすべて読み終えた時、もうひとつの世界が見えてくる…!
どんでん返しの連続、南口綾瀬の短編集
「『明日のわたし』、満を持して読みました」
まず一読目。そして二読目。ああ!ここがここに繋がってて、それで…!とまたページを戻る———そうやって何度も楽しむことができる、待ちに待った南口さんの新作です。今作もまたパズルのようにちりばめられた伏線とどんでん返しに胸を躍らせっぱなしです。最初は短編集かと思ったのですが、読み進めるうちに「イヤイヤイヤ。南口さんだよ。すべてが繋がっているはず」と思い始めます。途中までくるともう引き返せません。そして第一話の始まりで「いじめがテーマなのかな」なんて思うのですが、「イヤイヤイヤ。南口さんだよ。そんな、”いじめの話”というひと言でまとまるはずがない」
実際、最後には思いもかけないところへ連れて行ってくれました。これまでの南口さんの作品に出てきたキャラクターも登場し、かなりのムネアツ展開でした。
この小説は、誰かに勧めるときに「主人公は○○」と言ってはいけない小説です。誰に感情移入するかも人それぞれ、そして何代にもわたる繋がりの中で、起こった事件と起こりうる事件、未然に防げることと防げない運命がパラレルに絡まり合い、人の人生には悲喜こもごもがあるけれど、なによりも未来への希望が描かれているお話だと感じました。
いつものことながら、南口さんの「少年少女」の心象風景の描き方が素晴らしくて、おばちゃんでも一瞬にして感情移入できてしまいます。久しぶりの一気読み×2+パラパラ。とても素晴らしい時間を過ごせました。ありがとうございます。
May 27, 2023 (令和5年5月27日)
みらっち